ヒメボタルについて
ヒメボタル(LuciolaParvul):甲虫類 ホタル科

水生ホタル、陸生ホタル

ホタルは主に陸生と水生に分けられ、世界中にいるホタルのほとんどは陸生で、水生のものは世界でも5種類しか知られていません。日本では46種のホタルが確認されており、水生のホタルはゲンジボタル、ヘイケボタル、クメジマボタルとイリオモテボタルの4種類だけです。つまりゲンジボタルとヘイケボタルの様な水生のホタルは世界のホタルの中から見ると非常に特異な存在なのです。5種の水生ホタルの内4種類も日本に生息し、それが、我が国の主流を占めているということからも、日本が清流に恵まれていることが分かります。

ヒメボタルはゲンジボタルより小さい

ヒメボタルは、ゲンジボタルやヘイケボタルよりも一回り小さいが黄金色の強い光の点滅が特徴となっています。大きさは、7ミリから9ミリで、色は黒色、前胸部は淡赤色、その中央には、黒褐色の半円形があります。オス、メスともに腹部後方に黄白色の発光器を持っています。オスは後翅が発達しており、生息地で飛んでいるのはオスばかりです。メスはふっくらとした腹部に無精卵を40から90個持っています。後翅は退化していて飛べません。そのため、生息地が限られているのです。オスも飛翔力は弱く行動半径は狭いものとなっています。ですから、雨の夜や風の強い夜は出てきません。

ヒメボタルの一生

メスは草の茎や枝に捕まりながら発光し、それに惹かれてやってきたオスと交尾します。交尾して受精し、翌日産卵を終えて死ぬのです。
受精卵は1ヶ月で幼虫となり、餌となる陸生の巻き貝を食べながら大きくなります。餌の巻き貝としてはベッコウマイマイやオカチョウジガイが知られています。
研究者の観察によりますと、一匹のヒメボタルが成長するためには約50個必要であるとされています。終令幼虫は4月上旬、土の中に潜り、口から液を出して「土繭」をつくります。そして、頭、足、羽が出来ていきます。5月中旬、雨降りの翌日、柔らかくなった「土繭」を破ってようやく地上に出てきます。羽化して(成虫になって)からの寿命はオスで7日、メスで2〜3日の命に過ぎません。餌としてのベッコウマイマイやオカチョウジガイは、腐葉土化したクズ等の落ち葉を餌としています。
以上をまとめると、ヒメホタルが成長するためには、樹林や竹林の下で、適度な湿り気があり、クズが繁茂した湿った草むらが必要ということになります。だから、不用意な除草、農薬散布はヒメボタルにとって致命的なダメージとなりかねないのです。


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