5号より
まつぼっくりの名札                                      酒井まゆみ

この会が発足してから早1年が過ぎてしまいました。あっという間の時の速さに驚きつつ、私たちが追い求めてきたことにどれだけの賛同を得られたのでしょう。地球を愛する人々には少しずつ手答えを感じるものの、行政の胸の内は見えてこないのが残念でならない。今、本当に相生山の中に道路は必要なのか、昭和32年の計画に基づき行うメリット、デメリットをもっと探って欲しい。
 今年も多くのホタルが心に豊かさを芽吹いてくれました。道路計画がある中でオアシスの森を名古屋のシンボルの1つにしたのなら、美味しい蜜をぺろっとなめさせておいて、あとはおあずけという、もやもやした気分にさせた市の方向は間違っていませんか。オアシスの森の開森式に3人の子供と参加した時、当時は道路建設のことは全く知らなかった我が家族と共に松原市長が森を歩き、植樹もした。まつぼっくりも拾った。大きな山桜の木に娘は自分の名前を書いた記念の名札をかけた。その時市長が娘の頭をなで、「君はどこに住んでいる?」と声をかけてくれ、「そうか相生か、いいところに住んでいるね。この自然、大切にしようね。」と言って、ご自身の式典の名札を胸から外し、娘の胸につけてくれた。周りの方々から大きな拍手をもらい、娘は照れていた。まつぼっくりを赤く染め、式典にふさわしい手作りの名札に感激した。その時のまつぼっくりを今でも大切に机の中にしまってあります。しかし、昨年の大きな市の動きで計画を知った娘は、「なんだ、自然、自然って言っているけど、所詮大人は勝手だよね。」と言った。自分だって大人になったら勝手なことをするよと語られているようでギクッとした。
 道路がここに出来てしまったら、娘は大人になってなんて感じるのだろう。どんな大人になるのだろう。子供たちの笑顔、いつまでも見たくありませんか?心の豊かな子供にしたくありませんか?考えてみましょう。耳を傾けてみましょう。
 今年のホタルも私の中にいろんなことを語ってくれました。そして静かに消えていきました。心の輝きをありがとう。来年もまた逢えたねと言いたい。
ヒメボタルは癒し系
鑑賞会報告

                                 新實 豊
 
暗やみで光りながら漂うヒメボタルは癒し系・・・・。
昨年、初めて見たヒメボタルに感動し、この日がやって来るのをどれだけ待ち望んだことか。今年はあの感動を少しでも多くの人に知ってもらいたいと一週間の鑑賞会を行う事になりました。
5/30(水)鑑賞会初日、雨・・・。いきなり出鼻をくじかれた感じ。一応、集合場所に行ってみると一人女性の方が待っていました。「こういう天気の方がよく出るかと思って・・。」「残念ながら雨と風の日は出ないんですよ。」とお断りし、明日以降に来ていただくことに。
5/31(木)今日が結局第一日目。いったい何人の人がやって来るのだろうと期待と不安、そして緊張。この日の参加者31名。私たちが反対している道路建設の話しといくつかの注意事項を説明し、いよいよ出発。集合場所の草むらや最初の竹やぶでもピカピカ、ふわふわと漂うホタルに出会え、皆さん感動。しかし、昨年、あんなに出ていた道路予定地の沢はほとんどいない。やっぱり九月の大雨が原因なのかと思いながら、ウメ畑や山根口の竹やぶへ案内。
この後、有志でオアシスの森以外の雑木林や徳林寺周辺などヒメボタル分布調査を行った。探鳥会で歩いている道を夜中に歩くとそこにもやっぱりホタルが・・。相生山はほんとうにホタルの山だ!
6/1(金)第二日目。この日は所用があって遅れて行く。既に皆さん出発されたあとで、この日の参加者はなんと100人との事。ちょっと驚き。一度に廻れないので何組かに分けて案内しているそうだ。ちょうど遅れてきた家族がいたので案内しながら近道して皆さんと合流。山根口近くの竹やぶは本当にきれい。老いも若きも男も女も大人も子供も、みんなあの不思議な輝きに心奪われているよう。あの光を見ていると心が落ち着いて、ほっとします。まさしく癒し系だ。
6/2(土)いつもより早く行ってみると、もう何人かの人が待っている。まだ1時間も前なのに。予想していたとおり次から次へとやって来る。この日一番気を使ったのは車の停め方。住民の皆さんに迷惑をかけないよう、少しでもたくさん停められるように整理する。参加者は200名、集合場所の相生口はまるで夜店でも出ているよう。
昨日と同じコースを行くが列が長すぎて後ろ方まで声が届かないようだ。今日は昨日より全体にホタルの数が少な目。道路予定地も少しは出るようになったが昨年の比ではない。
6/3(日)この日の参加者は46名。ホタルは人には全く無関心なようで中には人の頭の上に止まったり、散策路に降りて小石にはまっているのもいる。そこで踏みつぶされそうになるホタルを移動させるついでに特製?のケースに乗せてみなさんに見せた。小さな黒い体から明るい光を放つ姿がよく見え、皆さんも大感動!こういう接触も好奇心を育むには大事なことです。
6/4(月)72名。今日はバイオリンとリコーダーの演奏というおまけ付き。突然の申し出にどうしようか考えたが、ホタルを見ながらバイオリンの演奏を聴くのも悪くないなと思い厚意を受けることにした。平日にも関わらず子供がいたので時間が遅くなることが気にかかったけれど。皆さん、暗やみで聞くバイオリンに耳を澄ませながら目ではホタルを探す。残念ながらあまり見られない。場所が悪かったかも。それにしても今日は数えるほどしか見られなかったのが残念。
<おまけ>鑑賞会の終わり近く、ある人の呼びかけで市議会議員のもろくま修身さんがみえ、道路建設について真夜中のディスカッションを1時間以上も繰り広げたが平行線。ディスカッションの後、午前1時近く、建設予定地に行くと何とホタルがたくさん出ていた。昨日、今日と気温が高くホタルの出る時間が遅くなっていたようで、10時頃とはその数が全然違う。しばらくその場に寝転がって静かな森と光を楽しんだ。
6/5(火)今日が最終日の予定であったが、あいにく雨で中止。毎夜、毎夜の山歩きで肉体的には疲れているけれどやりたかったな、残念。
鑑賞会を終えて
 「ヒメボタルを見に多くの人が押し寄せたら?」それを想像するとどうしてもマイナスな面ばかりを思い浮かべてしまう。ホタルを採るのではないか、暗やみの中を子供が歩くのは危険ではないか等々。でも、道路建設の事や相生山の自然について知ってもらうには良いきっかけになるはず。この相反する考えに私たちは後者を最大限に活かし、前者を最小限にする鑑賞会を行うことにした。地元の人に迷惑をかけない、ホタルにも迷惑をかけない事を重点に準備し、当日を待った。そんな甲斐あって、あの200人近くの人が訪れた日さえも大きなトラブルもなく5日間の鑑賞会を無事終えることができた。私たちの「お願い事項」を素直に守ってくれた参加者のマナーの良さには感謝しております。
 「あっ、ホタル!」と暗やみで見つけた時のあの小さな子供の嬉しそうな表情と歓声は、私たちを励まし、これまでの活動をさらに後押ししてくれるもので、運営委員の結束もより堅くさせてくれた。慌ただしく、肉体的にも疲れたけれど充実感のある1週間だった。鑑賞会の目的もそれなりに達成できたと思うし、本当にやってよかったなと思う。
連日、夜遅くまで協力して戴いたスタッフの皆さん、そして440名の参加者の皆さんありがとうございました。これからも末永く相生山でホタルが見られるよう最大限の努力をしていきましょう。
 神々のひかり                  伊藤 順子
「あっ光った!」「そこそこ!!」
ヒメボタルの名からしておとなしい光かとの予想に反して、意外に強く美しい光にわれを忘れたひと時でした。
4月末に相生山緑地に引っ越してきて以来、緑の恵みの中に日々新しい発見があり、家の片付けよりも魅力的な森の散策につい時間をさいてしまう毎日を送っていた矢先、夜の10時半からのホタルツアーに誘われて夫婦で参加した時のことです。
 普段ひとけのない夜の森にどこからともなく10数人もの人が集まり、足元を照らすは小さな懐中電灯一つ、大人がゾロゾロとホタルを求めて歩く様は・…なかなか良いですね。ちょっとワクワクします。
そして出会うホタルの光は!神々しい清らかな光です。自然をぞんざいに扱うものへの警鐘のようにも思えてきます。そんな力がある光です。
 12時ともなると中年、それも鍛えていない山歩きビギナーの身にはいささかこたえ始めてきましたので失礼することにしましたが、なんと!まだまだ皆さんは歩き続けられるとか。2時(!?)までなんて声も聞こえてきましたし。それにしても森から道路に出ると「今のは夢?」と思わず振り返ってしまいました。
 数日後、土曜日のためか緑地の入口はホタル見物の車でいっぱいでした。ホタルの森から出てくると排気ガスがかなり気になったのも事実です。安易に車に乗る身としての反省を込めて、人間って困ったものだなあと思ったことです。
 名古屋市との話し合いを終えて      廣瀬 次久

本年5月29日付の市側の回答に不備を認め、6月21日市側と交渉を持った。この席で市役所道路係長は「弥富相生山線はつくります。」と言い切り、環境問題重視の今日的施策からはほど遠く、空に等しい40年以上前に作成した「都市計画道路」の完結をいそいでいる。
 同席した私はこれを聞いた時、郷土の童謡詩人金子みすずの詩“大漁”を想い出した。 
  『朝焼け小焼けだ//大漁だ//大羽鰮(いわし)の大漁だ。
      浜は祭りの//ようだけど//海の中では//何万の//鰮のとむらい//するだろう。』
 この詩は人間中心の生活を潤すために弱者となった側の悲鳴を伝えている。私たちは車社会の利便性を求め「自然」の改造・開発の名で「自然」を壊し、生息する動植物の悲鳴を大きくし、果てには絶滅危惧種を生んだ。現今、私たちはこの「自然」に心の安らぎの場、生きる心の糧を求めている。
 市側の「自分たちの施策には誤謬は無いんだ。」と思わせる発言が随所にうかがえ、「自然を大切に。緑地を保全しよう。」とする側を納得させるには至らなかった。
 6月22日付新聞朝刊によれば環境省が藤前干潟をラムサール条約の登録への手続きに入る方針を決めたと報じている。この干潟の保全を巡って、市民と市側に対立の構図が生じたが、この試練を無駄にせず双方の協力で他県の範となりうるゴミ減量に成功している。市側はこれを機に従来の「緑地も大切、道路もまた大切。」とする主張を改め、人々に潤いある生活をもたらすには、「緑地こそが大切だ。」とする施策を先駆的に行って欲しい。           

back