4号より
 春になって思うこと      野田 恵以子

2001年春。相生山に桜の季節がめぐってきました。昨年4月に『相生山の自然を守る会』が発足し、一年がたとうとしています。この間、行政との話し合い、1万人の署名活動、歩こう会、野鳥の会の方々との探鳥会、季節の行事と様々な活動をしてきました。これらの活動を通して行政側から「地域住民に反対の声のある中で強行に工事は進めない」と言わしめたことは大きな成果だと思います。
 5月から6月にかけて相生山にヒメボタルの乱舞が見られます。このヒメボタルをはじめたくさんの鳥、樹木が生き生きと生息できる環境を未来の子ども達に残してあげたい。そんな思いでいっぱいです。一人一人が一人の人と又・・・又・・・その輪は限りなく広がり反対の人の鎖で相生山が囲めることをと願って・・・。
    
相生山に生息する植物                                 村瀬 浩

森を歩くことの楽しみは、市街地のウォーキングと異なり、いろいろな動植物に出会えることです。
“心そこにあらざれば見れども見れず、聴けども聴けず”と言いますが、ぼや−と歩いているだけでは何も目に止まりません。時折立ち止まって、これは何だろう、あれは何だろうと注意をしていれば、回を重ねる毎に興味が湧いてきます。そこでその一助ともなればと思い相生山に自生する植物をいくつか取り上げてみました。

1、ヤマザクラ;これは相生山が他に誇れる素晴らしい花です。昨今どこへ行っても桜と言えばソメイヨシノと言ったありさまで、花時に葉が出ていない為、派手に見えますが、接木によって殖やされたクローンの宿命で、画一的で散りぎわの色褪せた花色は全くいただけません。そこへいくとヤマザクラは実生で殖える為、花色、花数、若葉の色に個体差があり優れた個体に出会った時は、その品格の良さに心を奪われます。西行法師の生きた時代にソメイヨシノはまだ作り出されていませんので、彼が愛でたのは紛れもなくヤマザクラであり、本居宣長が讃えたのもこのヤマザクラでした。嬉しいことに、相生山にはヤマザクラが多く自生していますので、花見をするなら相生山を歩いていただきたいと思います。

2、ズミ;
別名をコナシと呼び、上高地の小梨平は、これが多く自生しているところから附けられた地名です。バラ科リンゴ属の木で、5月のゴールデンウィークにリンゴの花を少し小さくしたような可憐な花を枝びっしりつけます。ただ、開花期間が短いようで、うっかりすると落花した後に訪れることとなります。おそらく4日ほどの命だと思います。この辺りのものは実が黄色をしているためキミズミと呼ばれ、晩秋の頃、オアシスの森の展望台の付近には小さな実をぶら下げている風景が見られます。

3、ヒメミカンソウ;
草丈20cm程の茎の細い草で、葉腋に粟粒ほどの小さな実をぶら下げます。私自身の観察では、岐阜県可児市で里山と田圃の境界辺りに生育しているのを見ただけです。全国的にはどうか知りませんが、相生山では貴重な植物です。

4、トキワススキ;
かつて新聞で7月にもうススキの穂が出たと誤報されたことがあります。良く見れば、穂の格好が少し違うほか、草丈もススキより高く、その名の通り冬も葉が枯れません。野並3丁目から相生地区の尾根に入ってくる途中の畑の縁、稲田の山の南側の道の縁、それからオアシスの森の南側果樹園の北の縁にあります。

5、コンテリクラマゴケ;
中国原産の苔で、明治初期に欧米経由で輸入されたと言われています。私が最初にこれを見つけたのは、相生地区の尾根筋から桜並木の方へ少し下った薄暗い樹林の下でした。発見当時、こんなに美しい色の植物があるのかと感激したのを覚えています。それは瑠璃色をして怪しく輝くような姿でした。現在その場所の群落は絶滅した模様で、今では他の場所に1箇所だけ見受けられます。ただそこは明るく開けた場所のせいか、あの怪しいような輝きは見られません。京都の北方、鞍馬山から花背にかけて自生しているクラマゴケに似ていて、それより少し大ぶりです。名前のコンテリとは、紺色に照り輝くと言う意味です。

6、カナメモチ;
よく外国から輸入されたものが、アカメガシとかアカメモチとして植木市で売られ、各所で生垣として植えられています。日本産のものは若葉が赤くなく、カーキ色をしています。晩秋の頃、枝の先端の軸からバラバラに分かれた赤い実を空に向かって突き出しています。

7、モチノキ;
皮を剥いで叩くとガム状の物質が採れます。これを鳥もちといって昔は小鳥を捕えるのに使いました。子どもの頃、文房具屋でこれを買い、竹竿の先に塗りつけてトンボや蝉を採ったものです。

8、クチナシ;
クチナシといえば園芸種のオオヤエクチナシを思い浮かべますが、ここにはえているものは、花が一重のもので、当然実をつけます。楕円形をした実の先に6本の萼片が残っており、その中心部が閉じているので“口が無い”と言う名前を貰ったようです。晩秋の頃、実は黄赤色をしており、昔はこれを染料として使用したといわれていますが、時間が経つと褐色に変色するので今では利用されていないそうです。それでも沢庵を黄色に染めるのに使われることはあるようです。

9、イボタノキ;
落葉性の低木で葉は枝の先端で左右に分かれて付くので見分けるのは楽です。5月頃白い花を総状につけてあちこちで咲いています。ライラックの接木台として利用されると聞きました。

10、ウマノミツバ;
食用にする三つ葉はその名のとおり葉柄の先に葉が三枚ついていますが、ウマノミツバは五枚に分かれていることと、葉にしわがあります。いくらか匂いはありますが良い香ではありません。相生小学校の西方に生えています。

最後に一言、相生山は丘陵地ですので、安全の為、歩くときは必ず靴底のパターンが登山靴に似たトレッキングシューズを履いてきてください。


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