11号より

                
5月31日の「日本各地のホタルのおはなし」では動物写真家小原玲さんと作家の堀田あけみさんにお話して頂きました。小原さんのお話の最後の部分をご紹介します。

(相生山のヒメボタルの写真)
これが相生山の蛍です。
私が見た限り哲多町*より広さの規模は圧倒的に大きい。4〜5倍あります。群生の数はそれぞれが哲多町と同じくらいです。県の天然記念物になって間もない哲多町と同じくらいの群生地が4つから5つくらいあります。私は日本でこれ以上の群生地を知りません。
私は相生山のことをなめていました。
名古屋市にあるのだからどうせ街の光があたって、たいした事ないだろうと。
ところがびっくりしました。
森の暗さはもう真っ暗になります。怖いくらいになります。ほんとにここが名古屋市かと思います。
名古屋市かと思うどころかいい森だなと思います。
これが、長野や岐阜であってもいい森だなと思うと思います。

(道路予定地の竹林で乱舞するヒメボタルの写真)
これは最後の一枚、道路予定地の竹林です。
相生山で一番蛍の多いところです。
道路予定のコースと蛍の群生の分布は本当に一致します。
どうしてかというとヒメボタルは沢で光が入りにくい場所が好きです。そういうところは一番低くて道路が造りやすいのです。

かぐや姫のお話はヒメボタルかもしれないと思います。
ここの蛍を見てると竹が光ってるように見える。
ここからお姫様が生まれてくるかもしれない。
だから「ひめ」ボタルというのかもしれない。
本当はどうか知りませんが竹林を見てるとそう思います。
この竹林はまさに日本の蛍の原風景なんです。
こんないい竹林で飛んでいるヒメボタルを私は他に知らないです。

自然や環境に対して守りましょう守りましょうというのは好きじゃない。大切にしましょうって言っておもちゃを大切にする子どもはいません。
でも自分の好きなおもちゃは絶対大切にします。
相生山のヒメボタルは見れば絶対好きになります。
悲しいことに私が写真を撮り始めたのは今年からなんです。それまで知らなかったのです。
とにかく今から相生山の蛍を伝えていきます。
あらゆる自分の写真の力を使ってここに美しい蛍がいるんだということを伝えていきます。
相生山の蛍を見てきれいだと思った人は相生山のヒメボタルはきれいだよと、人に伝えてください。
それが第一歩だと思います。
見に来る人が増えたら好きになる人がどんどん増えて、好きになると守りたくなります。
そうして守られたらどんなにうれしいことかと思います。
次の世代まで残ったらこんなにうれしいことはない。

日本の蛍をずっと見てきて、ホタルのいる原風景がどんどん消えていっているのです。養殖して蛍が生きていればいいという問題じゃないんです。
私たちが守らなきゃいけないのは、蛍そのものではなくて、蛍が飛んでいた風景なのです。蛍が飛んでいた自然なのです。

とにかく美しいものをどんどん見ていってください。
それが私の願いです。
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